東京高等裁判所 昭和31年(ム)5号 決定
民事訴訟法第四百二十九条、第四百二十条第一項第九号にいう裁判に影響を及ぼすべき重要な事項につき判断を遺脱したときは、当事者が、主張し又は裁判所の職権調査を促がして判断を求めた事項で、その判断の如何により裁判の結果に影響を及ぼすべきものにつき、裁判所が判断を遺脱したときを指すものと解すべきであつて、たとえ職権調査事項でその判断が裁判の結果に影響を及ぼすべきものであつても、当事者がこれを主張せず、裁判所もこれに触れなかつたようなものは、これに該当しない(大審院昭和七年(オ)第四一号、同年五月二十日第五民事部判決・判例集第十一巻一〇〇五頁以下参照)。本件において、再審抗告人等は、最高価競買申出人松村敬兆が外国人であること及び同人をして自己の計算において本件不動産を取得させようとした福島某が外国人であることを主張して、昭和二十四年政令第五十一号(外国人の財産取得に関する政令)の定める主務大臣の認可がなければ本件競売による所有権取得は効力を生じないのにかかわらず、裁判所がこの点の調査、審査をしなかつたことは前記法条に定める再審の事由に該当するというのであるが、右のような事実は、原決定をなすまでの間において当事者も主張せず、裁判所もこれを特に採り上げて判断の対象とはしなかつたことが記録上明らかであるから、原決定にこれに対する判断の示されていないことは当然であり、右は所論の再審事由に該当しない。(なお附言するに、前記政令第二十三条の二及び昭和二十七年八月二十一日大蔵省、通商産業省告示第一号によれば、外国人でも中華民国、大韓民国その他右告示に列挙する外国の国籍を有する者については、前記政令の適用がないから所論のような制限なく、前記松村敬兆、福島某が右告示に列挙する国以外の国の国籍を有する者であることは申立人等も主張せず、本件記録上も認めることができない。)よつて本件再審の申立を不適法として却下すべきものとし、主文のとおり決定する。
(齊藤 坂本 小沢)